平田 圭吾のページ

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『儲かる色の選び方 売れる色を見極めるマーケティング』 (デザインビジネス選書)  を読んで

いわゆるカラーマーケティングや、カラーデザインの本。
いろいろな商品の色使いについて言及があるが、この著者の方は、携帯電話、家電、自動車などの製造に深く携わってきたようで、そういった製品に関する色使いについて、造詣が深いように思われた。

初級から熟練者まで役立つ教科書的な良著

基本的に製品を使うだけのわれわれ側からすると、手に取ることはない本であるけど、読んでみると非常に面白い。製品の色を決めるのに、こんなにいろいろ考えてるんだということがよく分かる。もちろん、そういったことに既に携わっている人でも、参考になる部分は多いだろう。同じことを扱った他の本は読んだことはないが、要点がうまく、また分かりやすくまとめられているので、入門者から熟練者の基本確認でも使える教科書的な良著といえる。

 

デザインはセンスの世界ではない

この本を読んだことで、車の色とか、何気なく使っている製品の色とかに興味を持つようになった。また、「デザインはセンスの世界」というのが単なる思い込みであるということもよく分かった。
というのも、金儲けは浅ましい行為がつきまといがちであるが、これと同時に「失敗できない」「何とか儲けたい」という理由で、モチベーションも上がりやすく、かなり効率よく不確実なものや無駄を排除していくからだ。これはつまり、当然に「センスや感性」という不確実かつ無駄を生みやすいものを排除する方向に人を動かしていく。しかし、色はどうしても感性やセンスの問題である。だから、「理論で設計して(売れそうなものウケそうなものに絞り込んで)、最終的に感性やセンスで判断するのがデザイン」という結果に行き着くのだ。この本は、この過程ややり方について要点を抑えた上で分かりやすく書かれている。

 

色は感情や願望だけで選ばれる

また、色というのは、「感情や願望だけで選ばれるもの」ということで、これも考えたことはなかったが、言われてみてそうだなぁと思った。また、これがわかったことで、前から一個不思議に思っていたことの謎も解けた。

 

アニメキャラの髪の毛の色はどうしてあり得ない色なのか

その謎というのは「女の子アニメキャラ」の髪の毛の色についてである。女の子アニメキャラの髪の毛の色は、とにかく現実ではありえない色、紫とか緑、あとピンクが並ぶ。もっと極端に言えば、アニメファンには怒られるかもしれないが、興味のない私からすると、女の子アニメキャラの違いは、髪の毛の色も含めた髪型だけのようにしか見えない。だから、女の子アニメキャラの髪の毛の色を変えるのは、「キャラを見分けるため、キャラの違いを分かるようにするため」だと思っていた。
しかし、この本によると、色はその人の願望や感情によって選び取られるということで、まさにそういった理由で、髪の毛の色を現実ではあり得ない色からも選んでいるのだと分かった。多分、色が人に与える印象もよく考慮した上で、キャラの性格も決まっているのだろう。

 

この本を読んで売れる色を見極めたマーケティングをする

 

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『経営者のためのウェブブランディングの教科書』(幻冬舎) を読んで

いわゆるマーケティングの本。
会社や団体その他のホームページを作る際、ブランディングも意識したホームページを作ったほうがいいことが述べられている。また、そのようなホームページはどのようにしたらデザインできるのか、ということについても書かれている。
ホームページを作ろうかと迷っている会社や団体、あるいは、既にあるホームページをリニューアルしようと思っている会社や団体には役に立つだろう。

ホームページの重要性

現代において、「ホームページがとりあえずあればいい」という考え方は、かなり危うい。というのも、猫も杓子もスマートフォンの現代では、第三者が、その会社や団体について知ろうとする時、まず間違いないくホームページを見るからである。

客の立場からすれば、そこの商品を買おうか迷っているのに、ホームページが存在しない、あるいは、ホームページが会社のイメージとかけ離れているということならば、商品は購入しないだろう。

また、採用という観点からも、これから就職しようとする人、または社内で転職を考えている人も、その会社のホームページはとりあえずは見てみるものだ。ここでホームページに違和感や適当さを覚えれば、必ずやその人は、別の会社を探すだろう。

こういった意味で、ホームページの存在意義は現代においてかなり大きい。
この存在意義の高いホームページを、少し意識高めに作っていこうというのがこの本の言わんとすることだ。

 

ブランディングとは

また、企業や団体のイメージを固定した上で、長期的にマーケティング戦略を立てることを、現在ではブランディングと言う。だから、ウェブブランディングなのだ。

ちなみに、ブランドが何かということについては、表紙のデザインがそっくりで、日本経済新聞出版社から出ている『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』がかなりの良著である。

 

本の内容

話を戻して、この『経営者のためのウェブブランディングの教科書』には、どうゆう準備をして、どのような基準で、ウェブデザインの会社を選定し、付き合っていったらいいのかということが、ウェブデザイン会社の目線で書かれている。

また、ウェブページを構成する上で不可欠な読み物(コンテンツ)の作り方も、この本には書かれている。このやり方は3S6Gとこの著者の方が名付けているのだが、かなり効果的な方法だと思う。長いことウェブページを作り、また研究してきたのだろうなぁということが読み取れる洗練された考え方であった。

以上のようなことを知りたい方は、手にとって損はないと思うが、ブランディングについては、若干不十分と思われるので、先に紹介した『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』も読んだほうがいいと思う。

 

この本をアマゾンで入手してウェブブランディングについて知る

 

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『IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算』 (中公新書) を読んで

陰謀論、特にユダヤが絡むとよく目にする悪の巨大組織、その名も「IMF」。
アメリカのCIA、ロシアのKGBに次ぐ陰謀の府であるという噂は絶えない……(笑)
まあ、正直なところ、私は面白い(笑)話としてか、そういった陰謀論を聞くことはできないのだけど、「火のない所に煙は立たない」とも言うし、実際にはどうなのかということで読んでみた。

この本自体は、かなり難しい部類に入ると思う。というのも、投資や投機関係の横文字や英字がたくさんあるからだ。難しいというよりは不親切と言ったほうが適切かもしれない。一般読者向けとは言えないが、ネットで語句検索したり、前のページに戻ることを繰り返せば、読めないことはないと思う。
しかし、金融の常識が変わるのはかなり早く、8年前のこの本では既に古い情報も多くあるだろうから、そういった意味ではおすすめできない。とはいうものの、2009年までのIMFの歴史は、批判的にではあるが、うまくまとめられている。直近の情報がどうしても知りたいということでないならば、この本を読むといいと思う。

IMFの基本情報

また、最近は、世界的に景気が堅調であることもあり、めっきりIMFの名をニュースで目にすることもなくなった。なぜなら、この本にも書かれているが、IMFは国家破綻を防ぐための最終貸出機関という位置づけであるからだ。だから、IMFが活躍するのは、残念だが、深刻な経済危機が起こっている時である。


正式名称は、International Monetary Fund、ということで国際通貨基金
設立は、アメリカ主導で第二次大戦直後に行われており、この影響と出資比率の関係もあって、アメリカに単独拒否権がある。この当時の出資比率の二位は日本。
構成員は、出資比率に応じて各国からエコノミストが参加しているということらしいが、詳しい職員の構成については書かれていなかったので、正確な所はよくわからない。

 

IMFが怪しまれるのはなぜか

ここから、IMFが怪しまれる原因に絞って話を進めようと思う。また、ここから下は、この本から直接読み取れることでなく、私が読み取って導き出した一種の答えである。

 

IMFは第二次大戦の教訓を理念としている

それでまず、上の概略でも分かるように、そもそもIMFは、第二次大戦の教訓を活かすことを目的として設立された。
このため、IMFは、「ブロック経済保護貿易)」と「積極財政」に少なからぬ反感を持っている。なぜなら、第二次大戦に突入した主な経済的理由は、イギリスやフランスが植民地と行ったブロック経済、またドイツが際限なしの国債発行で行った積極財政にあったからだ。
だからこそ、IMFは、その設立使命として、自由経済と消極財政(緊縮政策)を推進しようとする。しかし、この姿勢は、現在の経済情勢に合っておらず、アジア通貨危機IMFが出てきた際にも、また、ラテンアメリカIMFが出たときにも、ソ連が崩壊してIMFがしゃしゃり出たときにも、はっきり言って裏目に出てしまった。

 

IMF融資に至る典型的なパターン

しかも、その途上国に資金を融資する定式パターンが、
1.自由経済推し進めるために、固定相場で規制緩和を推進
2.規制緩和するということは、外国からの資金が途上国に流入する
3.過剰な資金が流入すれば、その国の経済は過熱(バブル)化する
4.過熱(バブル)化でその国の通貨が実質安(お金の価値が下がる、体感で言うと、日本でもバブルの時は二束三文の土地が数億円とかで取引された)となっていく(マクロ的に見ても通貨が増えれば通貨の価値は下がる)
5.通貨が実質安となると、損切りのために、ここぞとばかりの資金の急激な引き上げが起こる
6.急激な資金の引き上げで、固定相場の為替維持が困難になり為替自由化
7.その国では資金の引き上げで資本が枯渇する上に、急激な為替安で輸入品が割高になる
8.モノが全般的に高くなって(急激なインフレとなって)、経済が低迷する上に、外貨準備高も無くなる
9.IMFが外貨を貸し出し、通貨安の歯止めをかけようとする
10.しかしIMFは、貸出の担保として緊縮財政(消極財政)を押し付ける
11.その国では資金が枯渇して景気が悪いのに、緊縮財政でさらに資金が市場に出回らなくなり、当然のように景気はさらに悪化する
12.それでもIMFは節約やリストラなどコストカット、また資産売却を押し迫り、猛烈な取り立てをする
という感じなのだ。

 

IMFの正体

良心的に見れば、さきほどから言っているように、自由経済・緊縮財政という第二次大戦の教訓を最大限活かしているのである。
しかし、これを実質面だけで見ると、先進国の余剰資金を途上国に投入して、この余剰資金を株ころがしで増やし、さんざん株ころがしでうまい汁だけ吸っておいてから、いざ返せないとなったら、猛烈な取り立てを行っているということになる。どうしようもないクズだ。

理念は「第二次大戦の教訓」であるが、実際には「ハゲタカ資本主義」、これがIMFの正体と言える。だから、この実際のほうを見て、多くの人はIMFを悪の組織と言うのだろう。しかし、上にも述べてきたように、組織的に悪いことをしようとして悪いことをしているわけではない。理念を優先して組織の方針や体質を変えないから、悪い結果が出てしまうのだ。

 

ユダヤ人とは関係ない

もちろん、単独拒否権を持つアメリカの意向も、悪い方向に事を動かすだろうし、基本的に、株ころがしをする人間にロクな人はいない。自分さえ儲かればいい人は、想像力がないから、自分だけが儲かれば他の人が生活苦になろうがおかまい無しなのだ。こういった人間が、アメリカを通じて、IMFに影響力を及ぼしている可能性はあろうだろう。また、こういった人間が全てユダヤ人だと決めつけるのが陰謀論だろうと思う。しかし、これは日本人でも、ドイツ人でも、中国人でも、どの国の人でも同じである。多くの金を持った人は、その金を失うことを一番恐れ、それがたとえ余剰金であったとしても、一文たりとも損をしないようにすることしか考えないのだ。

 

人間がそもそも悪だからIMFも悪となる

結局、IMFが悪の組織であるかもしれないことは否定はできないが、それは人間がそもそも悪であること、特にカネのことが絡むと極悪となることが原因なのである。また、経済に詳しい人というのも、基本的にはカネが好きな人が多い。自分は人々のために経済を勉強しているんだという奇特な人も多いだろうが、いざ自分の財産がどうにかなるということになれば、すぐその理念とは反対の行動をするだろう。「自分のカネは正義のカネだから一文たりとも損しないが、おまえらの悪のカネは困っている人に施さなければならない」と。

このような意味で、IMFという、どこの国家にも帰属しない宙ぶらりんな立ち位置にある「巨額のカネの集まる場所」に、「カネのためならなんでもする人物が集まる」ことは自然の理というものだ。個人的には、会社経営者にしろ、銀行頭取にせよ、IMF関係者にしろ、もちろん政治家もだが、責任を持たせるために厳罰が必要と思う。誰も罰を与えないから、自分のことしか考えないし、結局自分第一で考える。

 

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