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漢籍の読み方 2.なぜ書き下し文があるのか

2.なぜ書き下し文があるのか

 今回は、なぜ書き下し文があるのかについて説明します。

 

前回の記事を読まれていない方は、コチラ⇓ からお読みください。

漢籍の読み方 1.書き下し文とは何か? - 平田 圭吾のページ

 

2-1.書き下し文は日本人に読めない

 書き下し文は、前回の記事でも説明しましたように、基本的に日本人には読めない文章です。だから、極端な話を言ってしまえば、書き下し文はそもそも読まなくてもいいとも言えます。 

しかし、現在出版されている漢籍の本の多くには、書き下し文が付いております。

ですから、なぜ書き下し文が付いているのか、ということは漢籍を読む上で必ず考えなければならないことです。

 

このことを考えるに当たっては、日本の歴史から考えなければなりません。

 

2-2.日本の文字の歴史から考えてみる 

 まず、日本という国は、そもそもかなり文明的に遅れた国でした。というのも、(諸説ありますが)卑弥呼が日本を統一したのは、紀元三世紀です。このときに、やっと日本で国らしい国ができたと言えるでしょう。

 これに対して中国では、既にこのとき、皆さんご存知の三国志時代に突入していたのです。さらに言うなれば、その400年も前に、秦の始皇帝は、日本の数倍も広い中国を一度統一しています。もっと言えば、孔子が生まれたのは卑弥呼が死ぬほぼ1000年前のことで、孔子の生まれるさらに500年も前に周王朝というほぼ中国全土を統一した国もありました。

 

このとき、日本は縄文時代です。日本人は石器を使って穴に住んでいたのです。

 

2-3.日本では文字といえば漢字だった

 このような状況で、日本人が中国の文化を取り入れて見習ったことはごく自然なことでしょう。このため、中国と交流が開けた時、そもそも文字のなかった日本では、文字といえば漢字ということにしたのです。

こう言うと、「いや、“ひらがな”があったんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、平仮名ができたのは、紀元9世紀ころの平安時代と言われています。しかも、漢字を崩してできたのが平仮名なのです。

平仮名 - Wikipedia

 

このようなわけで、日本では、江戸時代まで、正式な書類や文学的な作品などは、白文で書かれていたのです。

 

その証拠に、今でも、お坊さんのお経は白文のままですね。

 

ですが、白文は読むのが難しく、この補助として用いられてきたのが、書き下し文や返り点なのです。また、白文をお経のように音読みで読まずに、返り点に従って日本語風に読むことを訓読と言います。この訓読を文章にしたのが書き下し文だと言うこともできます。

 

このように、歴史的に、日本では長い間、漢籍が書き下し文で読まれてきております。このために、現在の翻訳書にも書き下し文がついているのです。

 

次の記事で、書き下し文とどう接したらいいのかについて、考えてみましょう。

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漢籍の読み方 1.書き下し文とは何か? - 平田 圭吾のページ

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