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翻訳本 魏武帝註孫子 少しずつ公開3 『この本の読み方』

魏武帝註 孫子: 兵法武経七書 Kindle版 

魏武帝註 孫子 - Google Play の書籍

 

この本の読み方

 

《凡例・【すみ付きカッコ】と(カッコ)について》

 この『魏武帝孫子』は、『孫子』に曹操が注釈を入れるという形で書かれています。漢文の伝統的な注釈方法では、孫子本文に対して、注釈文が、ところどころに挿入され、注釈の文字の大きさは本文の半分となっています。しかし、これをそのまま同じように表記しても、現代では読みにくいだけです。そのため、今回は、挿入された場所は変えず、注釈を【すみ付きカッコ】でくくることによって、これらの区別をできるようにしました。

 この注釈のある文章は、特に『孫子』を読んだことがない方にとって、読みにくいものと思います。というのも、『孫子』という文章の流れに、別の文章が、言わば横入りするのがこの注釈であるからです。そのようなわけですから、まずは【注釈】を読み飛ばし、本文を読んで孫子の流れをつかみ、後から【注釈】を読んでみたり、ちょっと意味が分からないところを曹操に聞いてみようと思って【注釈】読んでみたりするなど、工夫してみてください。

 また、理解を助ける補足として、(カッコ)を用いました。これは、本文にない言葉を私が独自に補ったものです。私の補足以外での用法もありますので、魏武帝孫子序の◆解説◆も御覧ください。 

 

《本書の構成》 

 本書は、《副題》・◆書き下し文◆・◆現代語訳◆から構成されております。

 内容に応じて、私の方で章分けをし、その章の内容を一言でまとめた《副題》を付けました。また、書き下し文と現代語訳を対応して読めるように、つとめて一つの章が短くなるよう章分けをしました。短く章分けした理由は、次の書き下し文について、を読んでいただくと納得していただけます。

 今回、私による解説は付けませんでした。解説や読み物に興味のある方はこちらの記事を参考になさってください。(前回の『呉子』には全章に解説があります。このため、ビジネスシーンや普段の生活で兵法を使いたい人にこそ読んでいただきたい構成となっております。) 

 

《書き下し文について》 

 まず、書き下し文とは、原文の漢字を日本語風に並べ替えて、送り仮名を補ったものです。そのため、見たこともないような漢字や、現代とは意味の違う漢字も混じっています。だから、書き下し文に慣れている人は別ですが、そうでない人はこれを読んでも意味がわかりません。そこで、意味の分かるように翻訳したものが、現代語訳になります。

 こう言うと、「意味の分からない書き下し文など必要ない!なぜ載せたのだ?」と思われる方もいるでしょう。しかし、書き下し文を読むことで、「意味を考える」ことは、非常に重要なことです。また、孫子は高い文学性を備えており、書き下し文にて絶妙な表現がされております。現代語訳だと、私の拙(つたな)い理解力によって、その良さが削(そ)がれている場合もあるでしょう。このため、意味が分からなくても、一度は目を通してください、何も考えず声に出して読むのもいいでしょう。

 その後すぐに現代語訳を読むと、「書き下し文のあの部分はここだったのか」と、少しずつ意味が分かってくるはずです。このときに「反復学習」と「意味を考える」ことが行われているのです。このように頭を働かせることが、記憶につながり、理解につながるのです。

 そもそも、一度見ただけで、全てのことを記憶して理解できる人などは居りません。何度もやって、試行錯誤(しこうさくご)して、そうすることで、やっと難しいことを理解して、自分の言葉にし、実際に役に立てることもできるのです。

 書き下し文は、この反復と思考をするのに、絶好のものなのです。このようなわけで、書き下し文が掲載してあります。一回だけ目を通して「孫子曹操を理解した」と「勘違い」せず、是非とも何度も読んでみてください。

 また、現代語訳も補足も、答えではありません。書き下し文を理解していただくためのヒントでしかないのです。

 ある程度全体の意味が分かってきたのに、漢字の意味が分からないときは、面倒臭がらず、すぐに辞書で調べましょう。インターネット検索でも構いません。

 

《その他注意点》 

 書き下し文にて「而(しか)して」は省略される場合が多いのですが、原文(白文)表記がない編集方法を取っていることと、「而」があるときは、「その後で」「~ができてから」という意味合いが非常に強くなることから、「而」を書き下し文に反映しました。すでに孫子を読んだことがある方は、「あれ?なんか違うなぁ」と違和感があるかもしれません。

 旧漢字は断りなく新漢字とします。また、本文には常用漢字でない漢字も使われており、技術的な問題により、原文とは違う漢字を借字として使用する場合があります。可能な場合は※などで元の字が分かるようにします。

 最後に、孫子は、伝わった年代や場所の違いにより、中身が違うものが多くあります。このために、用いるテキスト(底本)の違いにより、内容も違ってきます。テキストの比較校訂など、学術的なことはほとんどしておりませんので、あらかじめご了承ください。(そういった学術的厳密性を求める方は、岩波文庫版『孫子』を参考にしていただくと良いでしょう。)なお、今回のテキストは、国立国会図書館で公開されている『魏武帝註孫子』・校点:鹿又常・出版者:額田正三郎です。

 

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