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翻訳本 魏武帝註孫子 少しずつ公開4 『始計第一』

【かっこ】の用法が分からないと意味が分かりません。前回の記事を参照してください。

 

始計第一

 

【計(けい)とは、将を選び敵を量(はか)り、地を度(はか)り卒を料(はか)り、廟堂(びょうどう)において計(はか)るなり。(計者、選将量敵(せんしょうりょうてき)、度地料卒(たくちりょうそつ)、計於廟堂也(けいおびょうどうや)。)(この始計第一に書かれていること、つまり計とは、将軍を選び、敵を量り、土地を測り、兵卒の強さを分析し、政治をするお堂でこれらのことを計り知ることである。)】 

 

《兵の必要性と五事七計》 

◆書き下し文◆

孫子曰(いわ)く、兵とは国の大事なり。死生(ししょう)の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。故(ゆえ)に之(これ)を経(はか)るに五事を以(も)てし、之を校(くら)ぶるに計を以てし、而(しか)して其(そ)の情を索(もと)む。【下(しも)五事・七計とは、彼我(ひが)の情を求むるを謂(い)うなり。】

 

◆現代語訳◆

 孫子(子は男子につける敬称で、「先生」程度の意味、つまり孫子とは孫先生。)は言った。兵のことは国の大事である。(なぜなら、兵のことは)死ぬか生きるかの地を決し、存続するのか亡びるのかの分かれ道となるからである。このような大事なことを詳しく考えないでおくということはできないのだ。

 だから、(兵のことを)総合的に考えるために五事を用い、(兵のことを)敵と比べるには計を用いて、そうすることによって、その実情を手探りから引き出してくる。【ここに書かれている下五事、七計とは、彼我の実情を求めることである。(この下五事と対になる上五事は謀攻第三に述べられている。)】

 

 

《下五事とは何か》 

◆書き下し文◆

一に曰(いわ)く道、【之(これ)を導くに教令を以てするを謂(い)う。】二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。

道とは、民(たみ)をして、上と意を同じくし、之(これ)と死すべく、之と生くべく、而(しか)して危を畏(おそ)れざらしめすなり。

天とは、陰陽・寒暑・時勢なり。【天に順(したが)いて誅(ちゅう)を行い、陰陽四時の制に因(よ)る。故に司馬法に曰く、冬夏は師(いくさ)を興(おこ)さず、吾(わ)が民を兼愛(けんあい)する所以(ゆえん)なりと。】

地とは、遠近・険易・広狭・死生なり。

将とは、智・信・仁・勇・厳なり。【将は宜(よろ)しく五徳を備うるべし。】

法とは、曲制・官・道・主用なり。【曲制なる者は、部曲・旗(はた)幟(のぼり)・金(かね)鼓(たいこ)の制なり。官なる者は、百官の分なり。道なる者は、糧路(りょうろ)なり。主用なる者は、主たる軍費用なり。】 

 

◆現代語訳◆

 一つ目が道、【教えと命令や法令によって民衆を導くこと。】二つ目が天、三つ目が地、四つめが将、五つ目が法。

 一つ目の道とは、民衆の意識を上位の者達の意識と同じにさせ、(上位の者は)民衆たちとともに死ぬこともでき、民衆たちとともに生きることもでき、(こうして、民衆たちに)危険なことを恐れさせないようにすることである。

 二つ目の天とは、陰と日向といった太陽に関すること、寒いのか暑いのかと言った気候、朝昼晩という時間のことである。【この天に従って敵を誅伐するのであり、これは太陽と月や季節といった(自分では変えられない)ことに準拠する。だから、『司馬法』には、「冬と夏には戦争を始めない、我が国の民衆を愛しているからである」とある。】

 三つ目の地とは、遠いのか近いのか、険しいのかそうでないのか、広いのか狭いのか、有利なのか不利なのか、といったことである。

 四つ目の将とは、是非を正しく判断する智、裏表なく言行が一致している信、思いやりと優しさの仁、何事にも動じない勇、犯すべからざる厳(といった将軍の人格や能力のこと)である。【将軍は宜しくこの五徳を備えなければならない。】

 五つ目の法とは、軍隊内部の編成、それぞれの役割、費用のことである。【曲制つまり軍隊内部の編成とは、旗や幟(のぼり)、どらの鐘(かね)や太鼓(といった合図や伝達)に関する制度のことである。官とは様々な役人の役割のことである。道とは兵糧を確保することである。主用とは(軍隊を維持するために必要な)主たる費用のことである。】 

 

《下五事を知る者と知らぬ者》 

◆書き下し文◆

凡(おおよ)そこの五者は将として聞かざるは莫(な)きも、之(これ)を知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。故に之を校(くら)ぶるに計を以てし、而(しか)して其(そ)の情を索(もと)む。【同じく五者を聞くも、将の其の変極を知れば則ち勝つなり。其の情を索(もと)むとは、勝負の情なり。】

 

◆現代語訳◆

 そもそも、この五つのことは、将軍ならば必ず聞いたことがあることである。しかし、これを知る者は勝ち、これを知らない者は勝たない。このために、これを比較計量するために計を用いて、そうすることによって、実情を手探りから引き出すのである。【同じく五者を聞いていても、その変極(臨機応変な対応)を知る将軍ならば勝つのである。その実情を引き出すとは、勝負に関する実情のことである。】 

 

《七計とは何か》 

◆書き下し文◆

曰く、主、孰(いず)れか有道たる。

将、孰れか有能たる。【道徳智能。】

天地、孰れか得たる。【天時、地利。】

法令、孰れか行わる。【設け而して犯さず、犯し而して必ず誅す。(設而不犯(せつじふはん)、犯而必誅(はんじひっちゅう)。)】

兵衆、孰れか強き。

士卒、孰れか練(なら)いたる。

賞罰、孰れか明らかなる。

吾れ此(こ)こを以て勝負を知らん。【七事以(も)て之を計(はか)り、勝負を知らん。】

 

◆現代語訳◆

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《この計を聞くか否か》 

◆書き下し文◆

将、吾が計を聴けば之(これ)を用うれば必ず勝つ、之を留めん。将、吾が計を聴かざれば之を用うるも必ず敗る、之を去らん。【計を定むる能わざれば、則ち退きて之を去る。】計を利として以て聴けば、則ち之が勢(せい)を為して、以て其の外を佐(たす)く。【常法の外。(常法之外)】勢とは利に因(よ)りて権を制するなり。【制を観(み)るに由(よ)るなり。権は事に因(よ)りて制するなり。(制由観也(せいゆうかんや)。権因事制也(けんいんじせいや)。)】

 

◆現代語訳◆

※非公開部分

 

 

《兵とは詭道(きどう)なり》 

◆書き下し文◆

兵とは詭道なり。【常形(じょうけい)無し、詭詐(きさ)以て道と為(な)す。】

 

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