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翻訳本 三略 少しずつ紹介4 「剛柔強弱 その1」

 

《剛柔強弱 その一》

 

◆書き下し文◆

軍識(ぐんしき)に曰(いわ)く、柔能(よ)く剛を制し、弱能く強を制すと。

柔は徳なり、剛は賊(ぞく)なり。弱は人の助くる所、強は人の攻むる所。

柔も設(もう)くる所有り、剛も施(ほどこ)す所有り。弱も用(もち)うる所有り、強も加(くわ)うる所有り。

此(こ)の四者を兼ね、而(しか)して其(そ)の宜(よろ)しきを制す。

 

◆現代語訳◆

 軍識には、柔は剛を制することができ、弱は強を制することができるとある。

 柔とは(控(ひか)えめにして自分の我を抑(おさ)える)徳のことであり、剛とは(自分の我を通すために何かを傷つける)賊のことである。弱は(憐憫(れんびん)の情によって)人が助ける所であり、強とは(自分の安全のために)人が攻める所である。

 そうではあるものの、柔であっても自分から何かすることがあり、剛であっても自分から施しをすることがある。弱であっても用いどころ(役に立つこと)はあり、強であっても加えるところ(補わなければならないこと)がある。

(このように、これらのものは相反しているようで、相容(あいい)れる所があるのであり、)この四者を兼ね備え、そうすることによってその宜しきを制するのだ。

 

◆解説◆

 軍識について、古註に「識は験なり。将(まさ)に来んとするの験を言うなり。其の書に曰(い)う有り。」とある。経験、実験という言葉もあるように、験は実際に試した結果という意味である。軍識という書物が存在したか否(いな)か分からないが、実際の軍事経験を通して作られた書物ということになる。

 内容についての主な解説は現代語訳に反映した。また、この四者を兼ねるためには、それぞれの中(ちゅう)を得る必要がある。中とは過不及のない点のことである。例えば、柔に過ぎれば控えてばかりで何もできず、剛といえども慎重ならば怨みを買わない。弱に過ぎれば打ち捨てられ、強といえども義があれば助けを受ける。大変に奥深い箇所であるので、各自にてさらに検討していただきたい。

 

『三略:兵法 武経七書』の紹介 - 平田 圭吾のページ

 

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