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平田 圭吾のページ

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『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』 (岩波新書)を読んで

多数決は正しいのか?

多数決という採決システムが果たして民意を反映するものなのか?

この問を中心にして話が進んでいく。

 

多数決の脆弱性

多数決の欠陥が大きく現れる事例は、一言で言えば、分裂選挙だ。前々回の都知事選では、舛添氏、細川氏、宇都宮氏が、並び立ち、「反原発」という焦点においては、舛添氏は負けていた。しかし、細川氏と宇都宮氏の両氏が「反原発票」を分裂させ、このことによって反原発分裂選挙となり、結局、舛添氏が都知事になった。

今思えば、細川氏を小泉氏が応援したのは、票を割らせるためだったと考えると、いかにも自民党のやり方らしいとも言える。若干余談は入ったが、多数決という方法には、三人以上の候補から一人だけを選ぶ場合において、このような脆弱性があるわけである。

 

民意の反映を目指すのが社会的選択理論

上の例は、私の考えだけど、このような分裂選挙において、民意が反映されない可能性をどのように排除していくのか、ということを考えるのが、この本であり、社会的選択理論と呼ばれる学問分野である。

 

本の内容

主権とは何かということを、主に、ルソーの社会契約論を基調としながら説明し、これに絡める形で、その社会選択理論が正しいのかということが検証される。

社会選択理論自体は、ほとんど数学の世界で、途中途中は説明が理論的に不誠実と思われる部分も多々あり、せめて、「数学的に難解なので詳しい理論の説明は割愛する」という一言が欲しかった。これがあれば、本の評価ももう少し高かったのだけど、岩波新書は法律関係以外はイマイチということは既に分かっていることで、編集者の質が低いのだと思う。

ただ、多数決以外の採決方法があるということは、盲点だったので、その点では勉強になった。

 

具体的な多数決以外の採決方法

具体的には、ボルダルール、スコアリングルール、コンドルセの最尤法、アローの定理、64%多数決ルール、クラークメカニズムなどが紹介されている。

64%多数決ルールについてだけ説明すると、多数決であったとしても、全体の64%以上の同意が得られれば、分裂選挙のような弊害は発生しないと言う。だから、憲法改正国民投票は、民意の反映という観点からすれば、現在の過半数でなく、2/3以上の同意が必要であろうとのことで、これは実にそうであろうと思った。

そもそも、もし、改憲国民投票が今後行われることになったとして、投票率が50%以下で、賛成が52%で改憲ということになったら、どうなるのであろうか。国民の25%しか賛成を表明していないものが民意の反映されたもの、ということになってしまう。主権と、主権の表れとしての投票システムの問題は、今後も詳しく議論されていくべきだろうと思った。

 

多数決以外の決の使い所

あと、完全に個人的意見だけど、会社内での人事などでも、スコアリングルールによる投票を行うと、いろいろ有効だろうと思った。具体的には、「こいつだけは上司にしたくない」という-1点枠を作り、ここに誰の名前が書かれるかで、いろいろなことが分かりそうだ。もちろん、機械的には処理できない。賢人は嫌われるからである。-1点がどのような雰囲気の会社で、誰につくのか、ということをよく観察すれば、表には出てこない黒幕や縁の下の力持ちもすぐ分かりそうだと思った。

 

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