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『広告コピーの教科書: 11人のプロフェッショナルの仕事から伝える』(誠文堂新光社)を読んで

広告業界のことがよく分かる本。
いわゆるハウツー本とはぜんぜん違うし、「教科書」というタイトルもハッキリ言って不適切。具体的な指導を施す教科書というよりは、むしろ観念的な教えを示すバイブルと言ったほうが適切。サブタイトルにもあるように、11人の広告業界で有名な人の原稿を集めた本である。

このため、広告業界に興味のある人、電通とか博報堂に就職したいと思っている人、既にそういった業界に身を投じている人、コピーライターに憧れている人、広告代理店に広告を任せようと思っている人、などにとってはかなり良い本だと思う。私はどれにも当てはまらないが、普通に読んでいて面白いと思ったし、「文章を作る」という点で参考になったので、少し本の評価を上げておいた。

 

広告業界とは

まず、そもそも現時点で、「広告」はメディア、あるいはマスメディアの1項目に挙げられるほどの大きな産業分野であり、確か、メディアの1割は広告業ということだったと思う。ちょっと正確な数字は分からないけれど、この産業規模は、新聞に匹敵するか、あるいはその半分程度はある、と言えば、その業界の広さと影響力の大きさが分かっていただけるものと思う。
もっと身近に影響力の大きさを示すと、ジョージアの「明日があるさ」、BOSSの「宇宙人ジョーンズ、このすばらしき、ろくでもない世界」とか、「ウーロン茶は、サントリーのこと」といったコピーは、日本人の90%以上が知っていて、しかも、実生活にある程度の影響を与えていることが分かる。むしろかなりの影響力を持っているのである。これらのコピーを書いた人の原稿もこの本には収められている。

 

広告業界は胡散臭い

また、電通博報堂という社名も出したように、これは一種の名誉回復のための本である。出版は、2015年1月で、忘れもしないオリンピックエンブレムの博報堂の佐野事件の半年後なのだ。だから、かなり厳選して「広告業界のライトサイド」を集めたんだろうなぁということがあからさまだった。

そもそも、私は広告業というものにかなりの不信感を抱いている。というのも、大げさに言うのが広告であり、宣伝であるからだ。同じような理由で、私は、営業職の人も基本的に信用しない。毎日大げさに売り込むことばかりしていれば、根はいい人でも、必ずそういった人になってしまう。この意味で、「広告業のライトサイド」を知れたのは興味深かった。しかし、あくまでも、これは表に出せる「ライトサイド」の話であり、もちろん、この本に出てこない「ダークサイド」も根深くあるんだろうと思う。証拠はたくさんあるので各自お察しいただきたい。

 

広告業のポリシーにおける共通点

それで、そのライトサイドの人たちが言っていることの共通点であるが、これが驚くことに「相手を思いやること、相手の立場になること」、『論語』で言えば「恕」なのである。あと、「嘘はだめ」ともある。胡散臭い広告業も、超一流くらいまで行けば、ライトサイドな考え方を基調とするのであろう。

また、「コピーは失敗できないので一発が重い」ということも非常に感じられた。これは作家や小説家と正反対と言っても過言ではない考え方である。普通の著述家は、表現を重ねて、言い方を変えて、同じことを何度も繰り返すものである。例えば、「夢を忘れず、ファンタジーを楽しむ」ということを言うために、ハリーポッターにはあれほど長い著述が必要なのである。しかし、コピーライターは、短いフレーズで、効果的にある一つのことを伝えなければならない、しかもお金をかけてCMとかも打つのだから失敗できない。

最後、いいコピーとは、「商品の取っ手になれるコピー」という言葉も、分かりやすく広告業を表現していると思った。コーヒーカップの中に入っている熱々のコーヒーがいくら美味しくても、コーヒーカップに取っ手がなければ、飲んでもらえない。コピーや広告とは、そういった意味で、「商品の取っ手」なのだ。

 

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