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呉子 書き下し文の抜粋

 

呉子』は『孫子』にも劣らない良書なのですが、あまり知られていないようです。

こちらに、紹介として抜粋文を掲載しておきますので、読んでみてください。『呉子』の大体の輪郭は分かると思います。

 

気に入られた方は是非とも拙著をお買い上げください。ここにある文章はツイッターに登録したものですので、字数制限のため簡略な翻訳となっておりますが、本書では平易で丁寧な翻訳となっております。

解説も全ての章に付してあります上に、徐々に兵法書の役立て方を知っていただけるように、解説を書いてあります。

さらに、付録史記』と『韓非子』の抜粋から、作者呉起の事跡をたどることもできます。

 

呉子: 兵法 武経七書 Kindle版  

『呉子(武経七書)』 Google Play版

 

以下が抜粋文です。また、こちらも正直なところ商売ですので、思わせぶりな抜粋もあります。「え、それってどうゆう意味なの?」と思った方はぜひお買い上げください。(*^_^*)

 

臣見(あら)わるるを以て隠れたるを占い、往(おう)以て来を察す。主君、何(なん)ぞ言と心と違(たが)う。『呉子・図国第一』

◎わたしは、見えることから隠れたことを考え知り、既に終わった往事からこれから来る来時を推察しています。あなたさまは、どうして心と違うことを言うのですか。

 

譬(たと)えば、猶お伏鶏の狸(たぬき)を縛り、乳犬(ちのみいぬ)の虎を犯すがごとくにして、闘心有りといえども死に随(したが)わんか。『呉子・図国第一』

◎(兵事に通じたものを求めないなら)鶏が狸を縛り上げ、幼い犬が虎を倒そうとするようなもので、やる気があって死ぬことになります。


明主は茲(ここ)に鑑(かんが)みて、必ず内に文徳を修め、外は武備を治む。『呉子・図国第一』

◎物事の道理に明らかな者は、この事跡のことをよく考えて、必ず内には文徳を修めるようにし、外に対しては武備を治めるようにするのです。


諸侯と大戦すること七十六。全き勝ちは六十四。余は則ち均しく解く。四面に土を闢(ひら)き、千里の地を拓けるは、皆起の功なり。『呉子・図国第一』

◎76回の大きな戦をして、全勝というべき勝ちはそのうちの64回、残りは和睦か引き分けとしました。これは皆呉起の功績です。


昔の国を図(はか)る者は、必ず先に百姓を教えて万民に親しむ。不和には四有り。『呉子・図国第一』

◎昔の国のことをよく考える者は、必ず先に様々な職業の人々を教えてすべての人に親しみました。(国の存亡を揺るがす)四つの不和があるからです。


若(も)し行いて道に合わず、挙げて義に合わざれば、大に処(お)りて貴に居るとも、患(うれ)い必ず之(これ)に逮(およ)ぶ。『呉子・図国第一』

◎行って道に合わず、事を挙げて義に合わないならば、大きな勢力があって高い位があったとしても、必ず心配事が身に及ぶのです。


天人(てんひと)に順(したが)いて挙ぐ、故に能(よ)く然(しか)らしむるなり。『呉子・図国第一』

◎天の道理と人の情に従って挙兵する、だからこそよくそのような結果を得ることができるのです。   


是(ここ)を以て、勝ちを数えて天下を得る者は稀(まれ)にして亡ぶ者は衆(おお)し。『呉子・図国第一』

◎このようなわけで、何度も勝ちを重ねて天下を得る者は稀であり、亡んでしまう者こそ多いのです。


呉子曰(いわ)く、凡そ兵の起こる所に五有り。一に曰く争名、二に曰く争利、三に曰く積悪、四に曰く内乱、五に曰く因飢(いんき)。『呉子・図国第一』

◎そもそも、出兵する理由は五つある。一つ目が争名、二つ目が争利、三つ目が積悪、四つ目が内乱、五つ目が因飢(いんき)。


武侯問うて曰く、願わくば陣(じん)して必ず定まり、守りて必ず固く、戦いて必ず勝つの道を聞かん。 起対えて曰く、立ちどころに見るも且(か)つ可なり。豈(あ)に直(ただ)聞くのみならんや。『呉子・図国第一』

◎「必ず勝つ方法はあるだろうか」 「それはすぐに実現できることです」


世は聖を絶たず。国に賢乏(とぼ)しからず。其の師を能く得る者は王たり、其の友を能く得る者は覇たりと。『呉子・図国第一』

◎世の中には常に聖人が居り、国に賢者はいくらでも居る。教えを乞う師を得るならば王者となり、対等に語る友を得るなら覇者となる。


夫(そ)れ、国家を安んずるの道は、先(ま)ず戒(いまし)むを宝と為(な)す。今、君は已(すで)に戒む。其(そ)れ禍(わざわい)遠からんや。『呉子・料敵第二』

◎国を安定する道においては、心を引き締め警戒することこそ宝とすべきです。あなたは心配していますから、禍も遠いでしょう。


請(こ)う臣、六国の俗を論ぜんことを。『呉子・料敵第二』

◎このわたくしめに、戦国の七雄の風俗について論じさせて頂きたい。(この後各国の政治と軍隊を呉起が分析する)


凡(おおよ)そ敵を料(はか)り、卜(うらな)わずして之(これ)と戦う者に八有り。『呉子・料敵第二』

◎そもそも、敵のことを測り知って、考えるまでもなく戦うべき敵に八つのものがある。


占わずして之を避くる者に六有り。『呉子・料敵第二』

◎考えるまでもなく避けるべき敵に六つのものがある。


所謂(いわゆる)、可を見て進み、難(かた)きを知って退くなり。『呉子・料敵第二』

◎今述べたようなことが、可能であることを見て進み、困難であることを知って退くということなのだ。   


兵を用いるには、必ず須(すべか)らく、敵の虚実を審(つまび)らかにして、其の危に趨(おもむ)くべし。『呉子・料敵第二』

◎兵を用いるには、必ず敵の空虚なところと充実したこところを詳しく調べて、その危うい所におもむくべきなのだ。


武侯問うて曰く、兵の道何をか先にせん。 起対(こた)えて曰く、四軽二重一信(しけいにちょういっしん)を先にせん。『呉子・治兵第三』

◎「兵事においては何を先にやるべきだろうか」 「四軽二重一信(できる限りの準備と法令整備)を先にすべきです」


武侯問うて曰く、兵は何を以て勝ちと為す。 起対えて曰く、治めるを以て勝ちと為す。『呉子・治兵第三』

◎「兵とは何によって勝つことができるのだろうか」 「治まっていることによって勝つことができます」


所謂(いわゆる)治者とは、居れば則ち礼有り、動けば則ち威有り。進みて当たるべからず、退きて追うべからず。『呉子・治兵第三』

◎治者というものは、動かなければ礼があり、動けば威風があり、進めば当たることができず、退却すれば追うことすらできないものなのです。


上の令既に廃(すた)るれば、居るを以て則(すなわ)ち乱れ、戦うを以て則ち敗る。『呉子・治兵第三』

◎上位者の法令がすたれてしまえば、動かなければ混乱が生じ、戦えば敗北することとなるのです。


凡そ兵戦の場とは、屍(しかばね)に止まるの地なり。必死は則(すなわ)ち生き、幸生(こうしょう)は則ち死す。『呉子・治兵第三』

◎そもそも戦場とは、死ぬことが当たり前の地なのです。死に物狂いで戦えば生きて、生きることにこだわれば死んでしまうのです。


其れ善く将たる者は、漏船(ろうせん)の中に坐(ざ)して、焼屋(しょうおく)の下に伏するが如(ごと)し。『呉子・治兵第三』

◎善い将軍とは、水漏れのある船の中に座り、火事の家で円の下に伏せているかのようにしているものなのです。


用兵の害とは、猶予(ゆうよ)が最大にして、三軍の災いは孤疑(こぎ)に生ずと。『呉子・治兵第三』

◎兵を用いることにおける害は、余裕で構えることが最大のものであり、軍隊の災いは将軍が孤立することから生じるのです。


夫れ、人は常に其の能(あた)わざる所に死して、其の不便なる所に敗る。故に用兵の法は、教え戒(いまし)むるを以て先と為す。『呉子・治兵第三』

◎そもそも、人とは常にそのできないことが原因で死に、その不都合がある所で敗北するものです。だから用兵では教えることを先にするのです。


一人戦を学べば、十人を教え成し、十人戦を学べば、百人を教え成し、百人戦を学べば、千人を教え成し、千人戦を学べば、万人を教え成し、万人戦を学べば、三軍を教え成す。『呉子・治兵第三』

◎一人が学び多くを教える、これはねずみ算のことなのです。


必ず左を青龍(せいりゅう)として右を白虎(びゃっこ)とし、前を朱雀(すざく)として後ろを玄武(げんぶ)とす。招揺(しょうよう)は上に在り、従事は下に在り。『呉子・治兵第三』

◎左が青龍、右が白虎、前が朱雀で、後ろが玄武、上には北斗七星の旗があり、下は上に従っているのです。


凡(おおよ)そ、人の将を論ずるは常に勇において観(み)る。勇の将におけるは乃(すなわ)ち数分の一のみ。夫れ、勇者は必ず軽く合う、軽く合いて利を知らざれば未だ可ならざるなり。『呉子・論将第四』

◎人は武勇で将軍を評価するが、それは間違いだ。簡単に一騎打ちすれば、必ず利益を失う。


故に将の慎(つつし)む所の者に五あり。一に曰く理。二に曰く備。三に曰く果。四に曰く戒(かい)。五に曰く約。『呉子・論将第四』

◎だから将軍が慎んで自戒すべきことは五つある。一つ目が理。二つ目が備。三つ目が果。四つ目が戒。五つ目が約。


命を受けて辞せず、敵破りて返るを言うは、将の礼なり。故に師に出(い)づるの日、死の栄(さかえ)有りて、生の辱(はじ)無し。『呉子・論将第四』

◎命令を受けてこれを辞退せず、敵を破ってから帰る話をするのは、将軍の礼というものだ。だから、出陣の日、死の栄誉と生の恥を覚悟するのだ。


凡そ兵を用いるに四機有り。一に曰く気機、二に曰く地機、三に曰く時機、四に曰く力機(りきき)。『呉子・論将第四』

◎そもそも、兵を用いることには四つの変化の契機というものがある。一つ目が気機、二つ目が地機、三つ目が時機、四つ目が力機。


凡そ戦の要とは、必ず先に其の将を占いて、其の才を察するなり。其の形に因(よ)りて其の権(けん)を用いれば、則ち労せずして功挙がる。『呉子・論将第四』

◎そもそも戦いの要点とは、必ず先にその将軍のことをよく考え、その材質を推察するのです。天秤にかければ苦労せずに功績が挙がります。


令に従わざる者は誅(ちゅう)す。三軍威に服して、士卒は命を用(もち)う。則ち戦いて強敵無く、攻めて堅陣(けんじん)無し。『呉子・応変第五』

◎軍令に従わない者は誅殺します。このように全軍が法令を恐れて兵士は命令を聞くのです。こうなれば強敵も堅陣もありません。


人には短長有り、気に盛衰有り。『呉子・励士第六』

◎人には短所と長所があり、気には盛るときと衰えるときがあるものです。


今一死賊(いっしぞく)を広野に伏せしめて、千人之を追うも、梟視狼顧(きょうしろうこ)ならざるはなし。何(いず)れの者も、其の暴起ちて己を害するを恐るればなり。『呉子・励士第六』

◎死に物狂いの者が一人潜んでおれば、千人でこれを追っても皆が皆恐れおののくこととなります。

 

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