平田 圭吾のページ

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読書

『シンギュラリティは近い [エッセンス版]―人類が生命を超越するとき』(NHK出版) を読んで

シンギュラリティとは何か? まずは、この本のタイトルともなっている「シンギュラリティ」について解説しなければならないだろう。そもそも、「シンギュラリティ」とは、この本の著者で、スキャナーの発明なども手掛けたユダヤ系アメリカ人、レイ・カーツワ…

『植物は<知性>をもっている―20の感覚で思考する生命システム』(NHK出版) を読んで

わかりやすくて面白い本だった。 植物に関心があるほど面白い タイトルは衝撃的である。けれど、実は、これは「知性」の定義次第の話であって、植物が好きで、植物をよく観察している人にとっては当たり前のことを言っていたように思われる。ただ、私は、植…

『プラグマティズム入門』 (ちくま新書) を読んで

プラグマティズムとは何か、ということ、またプラグマティズムの歴史について、うまくまとめられていたと思う。 「真理を求めない哲学」という「特異な哲学」である「プラグマティズム」について、歴史や概要は十分理解できるので、哲学に興味のある人にはそ…

『「エイジノミクス」で日本は蘇る 高齢社会の成長戦略』 (NHK出版新書)を読んで

簡単に言うと、「最先端技術のうち、高齢者と相性のいいものを組み合わせて、経済を発展させよう」という本だった。 つまり、age(年齢、転じて高齢者)+ economics(経済学)で、agenomicsであり、タイトル通りの本であったと言える。タイトルのことに興味…

習近平の中国――百年の夢と現実 (岩波新書) を読んで

新聞記者で中国駐在員だった著者が、「習近平」を軸にしながら、現代中国の政治情勢をまとめた本である。わかりやすくまとめてあったし、新聞記者の方らしい、事実を重んじた本だと思う。 中国共産党の規模 まず、中国共産党の規模であるが、共産党員は、約9…

『広告コピーの教科書: 11人のプロフェッショナルの仕事から伝える』(誠文堂新光社)を読んで

広告業界のことがよく分かる本。 いわゆるハウツー本とはぜんぜん違うし、「教科書」というタイトルもハッキリ言って不適切。具体的な指導を施す教科書というよりは、むしろ観念的な教えを示すバイブルと言ったほうが適切。サブタイトルにもあるように、11人…

『誰でもすぐにできる 売上が上がるキャッチコピーの作り方 』(アスカビジネス) を読んで

典型的なハウツー本。 小規模な商売をしていて、広告を自分で考えなければならい人なら、手元に置いて参考にすれば、ちょうどいい本だと思う。 ただ、やはりブランディングによるマーケティング戦略がなければならないので、その点は他の本を読む必要がある…

昭和天皇 側近たちの戦争 (歴史文化ライブラリー)吉川弘文館 を読んで

読みやすくていい本だったと思う。 内容としてはタイトルの通りに、天皇側近を中心にして、大正末期から太平洋戦争終戦までの歴史を描いた本。 戦前の立ち位置不明な政治機関 昭和史について本を読んでいると、現代の常識や感覚で測りかねるのに、当時重きを…

『昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 』(ちくま新書) を読んで

タイトルの通り、昭和初期から戦後間もなくまでの日本史を扱った本。 2015年7月時点での「最新研究」をもとにした、それぞれの専門分野を研究している方の15の講義が収録されている。さすがに最新研究と言うだけあって、難しい部類に入ると思う。 この本の意…

『儲かる色の選び方 売れる色を見極めるマーケティング』 (デザインビジネス選書)  を読んで

いわゆるカラーマーケティングや、カラーデザインの本。いろいろな商品の色使いについて言及があるが、この著者の方は、携帯電話、家電、自動車などの製造に深く携わってきたようで、そういった製品に関する色使いについて、造詣が深いように思われた。 初級…

『経営者のためのウェブブランディングの教科書』(幻冬舎) を読んで

いわゆるマーケティングの本。 会社や団体その他のホームページを作る際、ブランディングも意識したホームページを作ったほうがいいことが述べられている。また、そのようなホームページはどのようにしたらデザインできるのか、ということについても書かれて…

『IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算』 (中公新書) を読んで

陰謀論、特にユダヤが絡むとよく目にする悪の巨大組織、その名も「IMF」。 アメリカのCIA、ロシアのKGBに次ぐ陰謀の府であるという噂は絶えない……(笑) まあ、正直なところ、私は面白い(笑)話としてか、そういった陰謀論を聞くことはできないのだけど、「…

『日本近代史』 (ちくま新書) を読んで

新書にしてはかなり分厚く、普通のほぼ倍の450pの力作。 著者の方は、長年日本近代史を研究されてきた方で、この本を書き上げた時には75才。東大の名誉教授という肩書なのだが、この本を読むと、尋常ならざる研究を積んでこられたこと、またその名誉に相応…

『金融政策入門』 (岩波新書) を読んで

入門というだけあって、金融について基礎から説いた本であるが、難しい部類に入る本と思う。 難しいが中立性の高い良著 日経新聞を隅々まで毎日読んでいるレベルの人か、あるいは大学で経済学部を出て学力を維持している人、事実国債などへの「投機」に身を…

『袁世凱――現代中国の出発 』(岩波新書) を読んで

この本も「李鴻章」と同じような歴史観のもとに、実質的に、李鴻章の後継者となった袁世凱についてまとめたものとなっている。 妾8人のハーレム状態で三日皇帝の袁世凱 この袁世凱も日本で知っている人はほとんどいないだろう。ただ、この人物に関しては、簡…

『李鴻章――東アジアの近代 』(岩波新書)を読んで

前に「近代中国史」を読んで、その後の中国の歴史が気になったのと、孫文の伝記を読んで、どうもこの李鴻章という人と、袁世凱という人が、当時の中国を代表する政治家であったようなので、そのような意味で興味が湧いて読んでみた。 歴史観 本の構成として…

『社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』 (ちくま新書)を読んで

タイトルに「入門」を付けていると良かったと思う。 あと、エッセイみたいな本で、基本的には読みやすい本だった。 というのも、普通こういったタイトルの本では、引用をふんだんに使って自分の意見は暗喩的に示すのが普通だからである。つまり、この本は、…

『ユダヤ人に学ぶ危機管理 』(PHP新書)を読んで

良い本だった。 旧約聖書を読んでいるとかなり興味深く読めると思う。 本の内容としては、ユダヤマニア(なぜかユダヤが好きな人)と思われる著者が、超危険な現地に乗り込んでユダヤ人と交流し、その他の歴史的な戦場を巡り、その体験をもとに、そこでの観…

『渋沢栄一――社会企業家の先駆者』(岩波新書) を読んで

渋沢栄一の生涯を歴史資料から客観的にまとめた本。 同じタイプの本はあまり読んだことがないので、うまくまとめられていたかどうかは分からない。 ただ、なるべく主観を排して歴史資料に基づく説明に徹しているということはよく伝わってきた。だから、渋沢…

『自立と孤独の心理学 不安の正体がわかれば心はラクになる』(PHP研究所)を読んで

簡単にまとめると、「正体不明の不安」の大半が「分離不安」によるものであり、これは幼児期の「愛着行動」を制限されたことが原因となっているという理論を説明する本なのだが、評価するのはなんとも難しい本だった。 その理由は以下の内容を読んでいただけ…

『小さな会社を強くする ブランドづくりの教科書』(日本経済新聞出版社)を読んで

いわゆるマーケティングの本、こういった本は初めて読んだのだけど、面白かった。 記述も簡素平明で、章分けも一章当たり10分以内に読めるようになっており、大変に読みやすい設計となっている。 「いいものを作っているのに売れない」という悩みのある経営…

『近代中国史』 (ちくま新書)を読んで

読み応えのあるかなりいい本だった。中国近代経済研究の集大成と言えるものではないか。 ただ、その分難しい。中国史の概略のみならず、経済・金融の知識がないと特に後半はあまり意味が分からないかもしれない。とはいえ、前半までは、ほとんどの人が興味深…

『「心の不安」が消える本~幸せになれる人、わざわざ不幸になる人~』 (大和書房) を読んで

良い本であった。 一見すると、著者の意見が書かれているようであるが、中身を読み進めていくと、実は、「ロロ・メイ」という人の不安理論を説明する本であった。最後の「不安に負けない心の持ち方」の部分は、著者の意見と思う。ちなみに著者は、テレホン人…

『現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 』(ちくま新書)を読んで

どんな本だったかと言うと、オウム真理教について興味を持った著者が、その源流をたどっていった結果、「霊性進化論」にたどり着いたというものだった。だから、カルト宗教の源流や、トレンドを知りたいという方、あるいは、カルト宗教を見分けたいと思って…

『合衆国再生―大いなる希望を抱いて(オバマ著)』(ダイヤモンド社)を読んで

かなり分厚い本で、読むのにかなりの時間がかかった。 今年で、オバマ大統領の任期(二期八年)も終わりということで、この大統領選前に本人の書いた本を読んでみた。オバマ氏の考えていたことが、どれほど実行されたのかを確かめるためだ。 なんでもそうで…

『小さな出版社のつくり方』(猿江商會)を読んで

面白かった。 本自体の装丁としても、カバーは半透明のものでデザイン性に優れ、紙の質も明らかに良く、クオリティは高いと言える。 内容として、ハウツー本ではなく、12の「小さな出版社」のできた経緯や、その後の経営状況を取材し、まとめた本であった。 …

『ネット炎上対策の教科書ー攻めと守りのSNS活用』(日経BP社)を読んで

本の内容 一般向けの本ではなかったし、炎上対策が主眼の本でもなかった。 つまり、この本の内容は、「炎上が怖くてSNSを活用することに二の足を踏んでいる企業」にジャストフィトするものであり、この条件に合わない人が読んでも、面白くもないし参考にもな…

『ソーシャルメディア炎上事件簿』(日経BP社)を読んで

本の内容 題名通りの本だった。内容としては、30件の「炎上事件」を固有名詞も出して紹介してある。また、炎上に関して、ある程度の分析も書かれている。炎上についてまとめた本は意外と少なく、そういった意味では貴重で価値あるものと思う。 ただ、問題点…

『ルポ トランプ王国−もう一つのアメリカを行く』 (岩波新書) を読んで

本の内容 いい本だった。 内容としては、タイトルの通りで、トランプ支持者への地道な取材をまとめたもの。トランプを支持した人の気持が克明につづられており、大変興味深く面白い内容だった。 時期や期間 取材の期間は、2015年11月で、大統領選が2016年の1…

『世襲格差社会 - 機会は不平等なのか』 (中公新書) を読んで

本の概要 まあ、普通の本だった。 トマ・ピケティの格差論(もっともこれは、主に資産相続によってもたらされる格差に関する理論のことなのだけど)に影響を受けた著者の方が、世襲に着目して格差を検証するという本だった。 相続と世襲の違い このように書…