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漢籍の読み方 3.書き下し文は読まなくていいの?

前回までの二回の記事で、書き下し文がどんなものかは分かって頂けたかと思います。ですから、次は、書き下し文とどう接するか?ということについて考えてみましょう。

 少しおさらいしますと、書き下し文は、原文と翻訳文の中間のようなもので、日本特有の文字の歴史上できたもの、ということでした。

 書き下し文が翻訳文でもなく歴史上たまたまできたものならば、漢籍を読むとき、書き下し文を読まなくてもいいのでしょうか?

 

3.書き下し文は読んだほうがいいのか?

 これに関しては、「読まなくてもいいが読んだ方がいい」というのが私の考えです。その理由を3つに分けて説明します。

 

3-1.本の内容は翻訳だけで分かる

西洋の古典、例えば、聖書やプラトンアリストテレスなどには、書き下し文がありません。しかし、翻訳してくださる先生方の力によって、内容がしっかり分かります。つまり、翻訳者さえしっかりしていれば、書き下し文がなくても内容はしっかり読み取れるのです。これは漢籍でも同じことが言えます。よって、「読まなくてもいい」と言うのです。

 

3-2.人はなんでも考えたほうが身につく

書き下し文は、日本語でもなく外国語でもありません。だから、これを読もうとすると、とても疲れます。しかし、疲れるのは考えているからなのです。そして、人は、考えたことのほうがしっかりと覚えているものです。例えば、昨日見たテレビのことはすぐに忘れてしまいます。これは、受け身でテレビを見ているだけで、考えていないからです。せっかく本を読むのなら、考えながら読んで、身につけたほうがいいですよね。このために、「読んだほうがいい」と言うのです。

 

3-3.日本人なら読もう

 前にも説明しましたように、江戸時代までは、この書き下し文で漢籍を読むのが当たり前でした。だから、織田信長徳川家康源頼朝平将門菅原道真小野妹子坂本龍馬西郷隆盛、そしてもちろん歴代天皇、こういった日本の歴史的人物も皆、この書き下し文で、漢籍に親しんでいるのです。今の日本に生きていることを少しでも感謝し、これらの人に少しでも敬慕の情があるならば、この人達と同じものを読みたいと思うはずです。故に、「読んだほうがいい」と言うのです。

 

この記事を最後まで読んでくださった賢明な皆さんならば、「書き下し文を読むか読まないか」心の中で決まったことと思います。そこで次回からは、「書き下し文の読み方」について説明していきます。

実は、書き下し文を読むと、かなり効率の良い脳トレができるのですが、どうして脳トレになるのか説明します。

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