平田 圭吾のページ

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本の紹介記事まとめ ジャンル別・5段階評価

記事の見方

本のタイトルの前に、おすすめ度と難易度を5段階評価してあります。

おすすめ度

★★★★★⇐高評価・低評価⇒★☆☆☆☆

これは、私の個人的評価で、総合的にこの本を私がおすすめするかどうかの目安です。

★5:必ず利益があるので一人でも多くの方に読んで頂きたい

★3:損をするということはないので興味のある方には読んで頂きたい

★1:読んでも時間の無駄かもしれない

難易度

★★★★★⇐難しい・簡単⇒★☆☆☆☆

これは、書かれていること自体の難易度で、下知識がどれくらい必要かの目安です。

当然ですが、難しいもののほうが書かれている内容の価値は高くなります。しかし、難しいものは、その分野への知識が少ない方が読むと、良い本であっても意味が分からない本となってしまいます。

★5:別の参考書や解説がなければ理解できない

★4:関連する分野に興味を持って取り組んでいれば理解できる

★3:考えながら本を読む習慣があれば理解できる

★2:本や新聞を読む習慣があれば理解できる

★1:ほとんどの人が理解できる

 

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ジャンル別

 

政治・政治思想

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★☆☆  近代政治哲学: 自然・主権・行政 (ちくま新書)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ』 (ちくま新書)

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★★☆☆☆  『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』 (岩波新書)

おすすめ度★★☆☆☆ 難易度★★★★☆  はじめての政治哲学――「正しさ」をめぐる23の問い (講談社現代新書) 

 

海外・国際

おすすめ度★★★★☆ 難易度★☆☆☆☆  『ルポ トランプ王国−もう一つのアメリカを行く』 (岩波新書)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『合衆国再生―大いなる希望を抱いて(オバマ著)』(ダイヤモンド社)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『習近平の中国――百年の夢と現実』 (岩波新書) 

 

経済・金融・職業

おすすめ度★★★★★ 難易度★☆☆☆☆  『20歳からの金融入門』(日本経済新聞出版社)

おすすめ度★★★★★ 難易度★★★☆☆  『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』 (講談社ブルーバックス)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★☆☆☆☆  『小さな会社を強くする ブランドづくりの教科書』(日本経済新聞出版社)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★☆☆☆☆  『儲かる色の選び方 売れる色を見極めるマーケティング』 (デザインビジネス選書) 

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★☆☆  『小さな出版社のつくり方』(猿江商會)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★★☆  『金融政策入門』 (岩波新書)

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★★★★☆  『IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算』 (中公新書) 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『経営者のためのウェブブランディングの教科書』(幻冬舎) 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『広告コピーの教科書: 11人のプロフェッショナルの仕事から伝える』 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『誰でもすぐにできる 売上が上がるキャッチコピーの作り方 』(アスカビジネス) 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『こんなにおもしろいファイナンシャルプランナーの仕事』

おすすめ度★★☆☆☆ 難易度★★★★☆  『経済学の哲学 - 19世紀経済思想とラスキン』(中公新書)

 

社会・社会問題・ネット

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★★☆☆☆  『世襲格差社会 - 機会は不平等なのか』 (中公新書)  

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★★☆☆☆  『ソーシャルメディア炎上事件簿』(日経BP社) 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★★☆☆☆  『ネット炎上対策の教科書ー攻めと守りのSNS活用』(日経BP社)

 

心理

おすすめ度★★★★☆ 難易度★☆☆☆☆  『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★★☆  『フロイト入門』(筑摩選書)

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『「心の不安」が消える本~幸せになれる人、わざわざ不幸になる人~』 (大和書房) 

おすすめ度★★★☆☆ 難易度★☆☆☆☆  『自立と孤独の心理学 不安の正体がわかれば心はラクになる』(PHP研究所)

 

歴史

おすすめ度★★★★★ 難易度★★★☆☆  『日本近代史』 (ちくま新書) 

おすすめ度★★★★★ 難易度★★★★☆  『近代中国史』 (ちくま新書)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★★☆  『昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 』(ちくま新書) 

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★★☆  『孫文――近代化の岐路』 (岩波新書) 

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『昭和天皇 側近たちの戦争』 (歴史文化ライブラリー)・吉川弘文館 

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『李鴻章――東アジアの近代 』(岩波新書)

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『袁世凱――現代中国の出発』 (岩波新書)  

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★☆☆  『渋沢栄一――社会企業家の先駆者』(岩波新書) 

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★☆☆☆  『ユダヤ人に学ぶ危機管理 』(PHP新書)

 

宗教

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★☆☆  『現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 』(ちくま新書)

 

哲学

おすすめ度★★★★☆ 難易度★★★☆☆  『プラグマティズム入門』 (ちくま新書) 

 

自然科学・先端科学

おすすめ度★★★★★ 難易度★☆☆☆☆  『植物は<知性>をもっている―20の感覚で思考する生命システム』(NHK出版)

おすすめ度★★★★★ 難易度★☆☆☆☆  『シンギュラリティは近い [エッセンス版]―人類が生命を超越するとき』(NHK出版) 

 

 

古典 

 

 

『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』 (講談社ブルーバックス) を読んで

読みやすいとても良い本

大変良い本だった。

ビットコインや通貨について興味がある人は是非とも読んで頂きたい。

ただ、難易度としては、経済(特に為替)と金融とインターネット暗号の原理について、ある程度の予備知識や、それらについて考える事の「慣れ」が必要になってくると思う。説明は丁寧で分かりやすいのだが、もともと難しいことを語っているので、理解できるかどうかは読み手次第かもしれない。

また、著者や編集者の方が大変誠実な方であることが、著述の節々から見て取れて、非常に好感が持てた。というのも、「難しいので説明は省略する」とか、「後で詳しく説明する」という記述がしっかり機能しているからだ。著者や編集者が不誠実な人間であると、かなりの確率で、これらの言葉が機能していないか、そもそも書かれていない。

レビューは当てにならない

とはいえ、最近は、自分の知識の少なさや考える能力の低さを、著者や出版社のせいにする人が増えているようで、誠に残念ではある。実際に本を読んでから、人のレビューなどを見ると、レビューがいかに当てにならないものかよく分かる。本来、評価できない人が本の評価をするレビューというシステムは、やはり欠陥が多いと言える。

 

第一章 ビットコインとはなにか?なぜ生まれたのか?

ビットコインがどういったものか、どういう経緯でできたものか、ということが大雑把に語られている。
簡単に要約すると、「ビットコインとは、暗号そのものが通貨となったもので、財産という観点からすれば金や銀などの貴金属に近い」ということになる。
ビットコインができた経緯としては、もともと、中本哲史なる人物が発表した論文が元になって、それを読んだ有志が「面白そうだ」という気持ちでやり始めたものらしい。それが、あまりにもうまくシステムが考えられているものだから、多くの人が利用するようになり、こうして価値を持ち始め、次第に金銭でも取引されるようになったようだ。 

 

第二章 ビットコインは通貨として通用するか?

金融と経済学の観点から、ビットコインが語られる。その上で、「通貨」というものがどういったものかについて、丁寧に説明があるのだが、経済学に全く疎い人は、全然理解できないかもしれない。
また、金融の観点から、ビットコインが「少額決済」に向いていること、「多国間決済」に向いていることが語られる。この観点からして、ビットコインのライバルは、クレジットカードになるということらしいが、実にそのとおりであろうと思った。

 

第三章 ビットコインを支える暗号技術

実際にビットコインを支えている暗号技術や、ネットワークシステムについて説明されている。本来ならかなり難しいであろうことが、非常に丁寧にまた分かりやすく説明されているが、ここでは説明しないので、興味のある方は実際にこの本を読んで頂きたい。 

 

第四章 ビットコインは通貨の未来をどう変えるか

ビットコインが、国家通貨と比較して、有用なのか、信頼に値するのか、ということについて、著者の意見が述べられている。
その過程で、中央銀行制度や国家財政、通貨の裏付けとは何か、などと言った金融経済でもかなり難しい、というか複雑な部分についての説明があり、その上で、ビットコインとの比較が説明される。
途中に、日本は江戸時代の時点で、かなり金融の発達した国だったということが書かれていて、非常に興味深かった。それなのに、幕府の放漫財政と、明治政府の強引な政策によって、この金融システムが破綻した経緯があるとのことで、また別の本で調べてみたいと思った。
あと、ユーロの失敗について詳しく語られていて、通貨が複数存在し、かつ為替が存在することの重要性も丁寧に説明されており、非常に勉強になった。

 

『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』 を読んで経済・金融・暗号を勉強する

 

ビットコインとの賢い付き合い方

最後、自分の意見として、ビットコインは、通貨としての価値はあるし、今後も需要は無くならないと思う。ただ、多く所有して儲けようといういわゆる投機の対象にするほどのものではないだろう。「自分が国際決済や小額決済で使う程度に所持する」くらいが、ビットコインとの賢い付き合い方であると思う。

 

経済の脆弱性

あと、この本を読んでいて、国家通貨もそれほど当てにならないものであることが身に沁みて分かった。というのも、国家通貨でも、仮に、日本経済が破綻、あるいは世界大戦のような惨禍が起きれば、一瞬にして価値が無くなってしまうからだ。「いやいや銀行や国がしっかりやってくれる」と思われるかもしれないが、石油が無くなって電気が供給されなくなれば、当然に銀行内の残高データやもちろん株式の所有のデータさえ全て飛んでしまう。こうなった時点で、国家通貨は崩壊するし、もちろんビットコインも一瞬にして消えてしまう。石油や電気への人類の依存度ということについては、本来なら国家レベルでもっと議論されるべきことである。しかしながら、そういった話は聞いたことがない。誰もこのことについて危機感を持っていないのは、実に危ういことである。

 

『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』 を読んで経済・金融・暗号を勉強する

 

hiratakeigo.hatenablog.com

 

『フロイト入門』(筑摩選書)を読んで

フロイトを知りたい人には良著

けっこう分厚い本で、いかにも大学の教科書という感じの本だった。

内容としては、フロイトの論文や理論が時間と順を追ってまとめられており、まさに「フロイト入門」という題名に相応しいものだった。翻訳者の方の、フロイトが読んでいたと思われる参考文献への理解も伺えて、フロイトを知りたい人にとっては良著だと思う。

フロイトの主張は変化している

フロイトも、83才と長いこと生きていること、また、生きた時代が、まさに近代の科学が確立されつつある時期であること、さらに第一次世界大戦ナチスヒトラーの時代という激変期を生きており、こういった意味で、非常に理論が変わっていっているように思った。

だから、一概に「フロイトが~~~と言っている」と、何かを決めつけるような物言いは、ほとんど不適切であろうと思う。フロイト自身の持論がどんどん変わっているのに、フロイト自身が後に覆した理論までも正論とするのはやはりおかしい。
また、これに関連して、フロイトは、自分自身の理論を全体から俯瞰して統合し、調整するような著書は残していないようで、いたるところに理論の矛盾があるように感じた。こういった意味でも、フロイトの理論は基本的には「未完」で、フロイトの「権威だけ」を借りた理論が現在かなり横行しているのではないかと思う。

 

フロイトの功績

私としては、フロイトの功績は、あくまでも「精神分析」という分野を確立したことであって、彼の理論が全てにおいて納得できるものとは思えなかった。

晩年までフロイトが固持した理論としては、「エディプスコンプレックス」が挙げられるであろうが、これもいろいろな所に理論的破綻があるように思われる。また、そもそも、この理論自体がフロイト自身の生い立ちとの関係が深すぎて、こういった意味でも一般化できる理論ではないように思った。

 

精神分析はオカルト

このような弊害が起こるのは、人間の精神、または人間の精神分析の分野がどうしても「オカルト」の域を越えないことにあると思う。
というのも、人間の精神は、電磁波のように数値化もできないし、万有引力の法則のように数式化もできないし、物理現象のように実験によって反復することもできないからである。だから、どうしても、想像の域を越えることができない。こういった意味で、隠されたもの、つまり「オカルト」の域をどうしても出ることができない。精神分析も、所詮は見えないことを見えないなりに、秩序付けて理論に当てはめようとするだけのものなのだ。

 

無意識の発見はフロイトの功績

ただ、フロイトが挑戦したこの分野は、人類にとって意味のある分野であるし、これによって助かった人も多くいると思うから、その点では非常に評価できると思う。

また、この本の冒頭には「神が死んで人間の理性が神に成り代わったのであるが、フロイトの研究によって、この理性が『無意識』に支配されているものだったと明らかにされた」とあるが、確かにそうなのかもしれない。
われわれ現代人は、少なからず「自分は無意識という自分自身でも制御できないものに支配されている」という共通認識を持っていると思うが、この共通認識をわれわれが持っているのは、まさにフロイトの研究の成果なのかもしれない。

 

フロイト入門 (筑摩選書)を入手してフロイトに詳しくなる

 

hiratakeigo.hatenablog.com